千の夜をあなたと【完】
<side.エスター>
西日が照らす部屋の中。
エスターは長椅子に座り、脚を組んで物思いに耽っていた。
夕陽を受け、そのアンバーの瞳に長い睫毛が影を落としている。
「……これでナイジェルの一家は終わり、か」
エスターの前には、短い銀髪の男――エリオットが跪いている。
エスターは艶やかな黒髪をばさっと後ろに払い、腕を組んだ。
「さすがに容赦ないな。あの男、ティンバートを心底恨んでいると見える」
「……あの、エスター様……」
エリオットは気遣わしげな目でエスターを見上げる。
エスターはくすりと笑い、エリオットを見下ろした。
「……なんだ? 言ってみろ」
「あの。本当に大丈夫なのでしょうか? あの男と手を結ぶ、など……」
エリオットの言葉に。
エスターはくっと喉を鳴らし、笑った。