千の夜をあなたと【完】
イーヴはエインセルに干肉を与えた後、足にくくりつけられていた白い紙を手早く取り外した。
紙を広げ、さっと目を通したイーヴの青灰色の瞳がすっと陰りを帯びる。
「また殺された、か。……ナイジェルの息子モルガンと、その従者2人。これで6人か。いったい何人殺せば気が済むんだ?」
イーヴはエインセルを室内の止まり木に止まらせ、再び椅子に座った。
腕を組み、考え込む。
ナイジェルといいモルガンといい、ティンバートの者が狙われているのは明らかだ。
しかしリカードはこの件について全く説明しようとしない。
ブラックストンの情報網を使ってイーヴも調べてみてはいるのだが、ティンバートが狙われる理由というのがいくら調べてもわからない。
となると。
「……私怨か?」
私怨となると街中でいくら情報収集してもわからないだろう。
リカードに直接聞くしかない。
イーヴはひとつ息をつき、胸元のシャツのボタンをひとつ外した。
その胸元には細い銀の鎖が繊細な輝きを放っている。
鎖の先に付けられた小さな木のペンダントトップを取り出し、イーヴはじっと眺めた。