千の夜をあなたと【完】




「……レティ……」


それは一年前の誕生日にレティから贈られた、三つ葉が彫り込まれたペンダントだ。

ペンダントと一緒に同封されていた手紙には、たどたどしい文字でこう書かれていた。


『シャムロックの木彫りのペンダントに祈りを千夜捧げると、願いが叶うそうです。イーヴリオン様の願いが叶いますように』


どこから聞いたのかわからない眉唾な迷信ではあるが、レティはそれを信じ、わざわざ木に彫ってくれたらしい。

イーヴはペンダントをぐっと手に握りしめ、目を瞑った。


何があっても、レティだけは守らなければならない。

彼女こそが、自分が求めていたただ一人の女性なのだ……。


――――この世に二人といない、大切な女性。


イーヴはレティに初めて会った時のことを思い出した。


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