キウイの朝オレンジの夜
その返答に一瞬場が静まったけど、男はさっさと逃げ出した。
「こらー!信田ー!!」
「梅沢!いい加減にしろー!」
畜生!と口汚く罵って、亀山さんから離れるハンサムな女性社員をあたしは唖然として見詰めていた。
・・・すんげー迫力。恐ろしい・・・梅沢さん。
「ごめんね、あんなんばっかりじゃないからね、ウチの会社」
ずり落ちた眼鏡を直しながら亀山さんがあたしに言う。あたしは慌てて頭を下げた。
「あ、いえいえ、大丈夫です。ありがとうございました!」
梅沢さんはまだ機嫌の悪い顔で、チッと舌打ちをして言う。
「廊下で何か聞こえたぞ、と思ったら、まさかあんなことを。ビックリだわ」
それを聞いて亀山さんがじろりと彼女を睨んだ。
「ビックリしたのは俺だっつーの。いきなり人のもの奪い取って後輩殴るなよ」
「別に減るもんじゃないでしょうが。野郎がケチケチしないでよ」
梅沢さんが噛み付くとそれにハイハイと扱い慣れた返事をして、亀山さんはあたしをチラリと見た。
「まあ、メゲずに頑張ってね」