キウイの朝オレンジの夜
一人ではこれないこういう世界につれて来て貰えるのは嬉しい。大体、客公認で酒を飲みながら仕事が出来るわけで。
梅沢さんが手渡してくれた現在加入中の保険設計書を熟読する。
あたしが設計書に没頭している間、彼女はすぐに来たジン・トニックを実に嬉しそうに口にしていた。
すぐに一杯目を飲んで、マスター、と柔らかく声を出す。すると2杯目が飛ぶようにきたのには驚いた。
「・・・お酒、お強いんですね」
「好きなの。私は酒飲みのヘビースモーカーなのよ。タバコ、いいかな?」
どうぞ、とあたしはカウンターのバーテンさんから灰皿を受け取って渡す。
慣れた動作で実に美しくタバコをくわえ、火をつける。ほお~っと眺めた。酒飲みのヘビースモーカーで営業・・・。なのに肌が綺麗なのは、何で??
そして彼女が一服するのを待って、では、と説明を始めた。
別の大手保険会社の少し前の目玉商品だった。終身保険が基本で、その上に更新する定期保険が乗っている。残念ながら医療は古くて現行に対応しているとはいえなかったけど、利率がいい時に入っているのでたまりも多く、保険としては素晴らしい部類に入るんじゃないだろうか。
これを作った担当者は、悪人ではない、ということは判った。つまり、自分の成績の為に作られた設計ではなく、ちゃんとお客さんの要望も聞いて、保険料との兼ね合いで作ったのだろうということが。
などを説明した。