キウイの朝オレンジの夜
「・・・えー・・・・っと、ですね。その・・・久しぶりに、女性営業職ならではの屈辱を受けまして・・・」
「うん?」
「何?」
男性二人が同時に首を捻る。あたしは小さくため息を零して、覚悟を決めた。仕方ない。さっさと白状して、帰ろう。
「枕営業してんだろ、あんたに契約やってもいいぞ、と言われたんです」
一気に言った。
相変わらずジャズは店に流れていたけど、間違いなく、一瞬その場が固まった。
目のやり場がなくて、あたしはマスターに微笑みかける。魔術師のようなマスターは、流石にあまり表情を変えずに、上手にあたしから視線を外した。
いい難いんだよなぁ、なんたって男の人だし。今まで直属の上司は女性ばっかだったから、もっと気楽にこんな話も出来たんだけど。
「・・・・」
黙ってしまった稲葉さんを、隣の楠本さんがじーっと見ていた。どう出るかを観察しているようだった。あたしは笑顔を貼り付け、では、と通り過ぎようとした。
・・・ら、支部長にパッと腕を掴まれた。
「――――――送っていく」
稲葉さんの言葉に隣の楠本さんが頷いた。
「その方がいいな。俺はこのままホテルに戻る。稲葉、またこっちにくるときは連絡するから、飲みに行こう」
「はい、お疲れ様でした」