キウイの朝オレンジの夜
――――――――・・・はい??何だって?こここここの、真顔の鬼支部長に送られる!?
楠本さんが会計をしに立ち上がった。
あたしは慌てて稲葉さんを見上げる。
「い―――――いやいやいやいや、支部長!!そんな必要ないです!どうぞ、楠本FPと飲みにでも遊びにでも行って下さい!」
これだけの美形が揃って歩いていたら、それだけで大層目立つだろう。色んな店で歓迎もされるはずだ。どうぞあたしの事は放っておいて――――――・・・
「すみません、楠本さん。この埋め合わせはまた次回に。奥さんに宜しくお伝え下さい」
稲葉さんはようやくにこにこと笑って、楠本さんに言う。和風美形の楠本さんは見る者をとろかすような笑顔で、おう、と手をあげた。
「神野さん、お疲れ様。2月戦頑張ってね」
「え?・・・あ、はい。頑張ります・・・って、いえ、だからですねえ・・・」
あたしがわたわたするのは完全に無視して、稲葉支部長はあたしの腕を拉致ったまま店を出る。
最後にちらりと見た楠本さんの瞳が笑っていたのをあたしは確かに見た。
「車、支社に停めてるんだ」
あたしの右腕を掴んだままスタスタと歩く支部長にあたしは何とか苦情を申し立てる。