キウイの朝オレンジの夜


「可哀想に。散々だったわね」

 あたしはゆっくりと彼女を振り返る。大久保さんは微笑を消してあたしをじっと見た。

「・・・あら。まだ他にもありそうな不幸ネタ」

 それですよ、それ。朝一番からどうしてこうなったのか本当に知りたいけど、大久保さんが真剣にあたしを心配してくれているのは判っている。だから告白する第一号はこの人に決定だ。

 あたしは不機嫌に呟いた。

「・・・午前3時にヤツと喧嘩しまして。電話で。そのまま破局と相成りました」

 大久保さんは目を見開いてあたしを見た。

「え?別れたの!?」

 がやがやと騒がしかった支部が、一瞬でシーンとなった。方々から突き刺さる視線が痛いぜ・・・。

 女の人って、すごい。こういう話は無意識でも耳がキャッチするらしい。

「えええ~!!?玉ちゃん破局ううう~?結婚秒読みじゃなかったっけえ?」

 わらわらと営業職員が集まってくる。

 60歳以上のベテランさんのみ心配そうな顔を自席からむけるだけにしているが、残りは喫煙組みまで飛んできたようだ。

 あたしは長くてくらーいため息をついてみせ、場を盛り上げた。

 どうせ道化で見世物になるのだ。雰囲気を暗くしまくっておこう。マスコットとしては、期待に応えなければ。



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