キウイの朝オレンジの夜
4、仕事仕事、時々乙女。
一石二鳥大作戦。
支部長が家まで送ってくれると言うのを、支部に忘れ物があるので、と何とか理由をこしらえて支部で下ろして貰った。
「待ってるから取ってこいよ」
車の窓を開けて稲葉さんが言うのに、あたしは目もあわせずにいえいえ、と手を振る。
「ついでに、さっき梅沢さんにオッケー頂いたので設計書も作ってみたいんです。忘れない内に。まだ副支部長いらっしゃるはずなので」
明りがついている事務所の窓を見上げて、稲葉さんは頷いた。
「・・・頑張るのは素晴らしいけど、余り遅くならないように」
「はい。今日はありがとうございました!お疲れ様でした!」
あたしは言うだけ言って、即行できびすを返す。多分、後ろで稲葉さんは面食らってるはずだ。何だ、あいつ?とか首を捻ってるかも。
だけどだけど、もう顔を見れない。少なくとも今晩は無理だ。あの瞳を見てしまったら、それだけでまた顔面炎上だろう。
そんな些細なことで気持ちがバレたら目も当てられない。
あたしは息を白く吐き出しながら、職員の出入り口を開ける。
・・・あああ~・・・あたし、こんなの本当に久しぶり。
光との恋愛は、成り行きのように始まったんだった。急激に盛り上げることもなかったし、急激に冷めることもなかった。だから別れたときもあんな感じだったのだ。まあ後でちゃんと話し合えたのは良かったけど。
「・・・いきなり乙女に・・・やばいぜあたし!」
もう息が切れ切れだ!