キウイの朝オレンジの夜


 こんなドキドキして、体温が上がって、声も失うなんて10代の時以来だよ~。どう処理したらいいの~!?

 穏やかな恋愛を長いことしていて、新しい恋の始まりにおろおろするあたし。

 だって仕方ないよね?だって、相手はよりによって鬼支部長なのだ。

 イケメンの、甘え顔の、昔で言う3高の、しかも中身が強烈に厳しい上司。仕事への情熱故、ヤツは社内恋愛を認めない。ばっさりばっさり切り離す。

 ・・・だから32歳になるまで独身なんだよ!さっさと結婚してくれてたら良かったのに!

 既婚者なら好きにならないのかと聞かれたらそんな自信もないんだけど、まだブレーキが掛かるはずだ。不倫はいけない、不倫は。

「ちっくしょう・・・」

 悪態が漏れる。ぼんやりと光る自動販売機を殴りたくなった。

 鬼教官時代だって、付き合うとすれば事務の子だった。それか、お客さんか。だけどやっぱり仕事を優先したらしい稲葉さんは、疲れたとかほざいてどちらの恋愛も短期間で終わらせたはず。

 この支部で支部長に惚れた一人目である繭ちゃんも瞬殺したわけで、なのにあたしはどうしちゃったんだ~!

 今まで、少しずつ好きになってきたんだろう。

 ちょっとずつ惚れていったんだろう。

 だけど自分でブレーキをかけて、気付かないようにしてたんだろう。

 素晴らしいぞ、あたしの本能!


< 126 / 241 >

この作品をシェア

pagetop