キウイの朝オレンジの夜


 二人でしばし沈黙してしまった。

 お互いがいろんなことを考えた沈黙だった。

 副支部長があたしを見る。あたしも隣を振り返る。

「・・・玉ちゃん、号泣の果ての酷い顔よ。それ直してらっしゃい。作戦会議はそれからよ」

 あたしは片手を高く上げた。はーい。

 そして、席から立ち上がった。



 で、決まったことはこれ。出来るだけ、ヤツとの接点をなくすこと。

 上司の異動はそれなりにあるのだ。ヤツがここで実績を上げれば、また昇進で次はもっと大きな支部の責任者として異動するはずだ、と副支部長は言う。

 そりゃあ確かにそうだ。私は頷く。だけど、次の異動でヤツを本社に戻すべく、もっと仕事に励み、成績をあげて頂戴と言われた時には、おいおいと突っ込んでおいたけど。

 副支部長はパチンと手を叩いた。

「そうよ、それそれ!!名づけて‘仕事に集中して恋心を忘れよう大作戦’!」

 嬉しそうだ。そりゃそうか。それであたしが更に契約件数をつめば、支部の予算も評価も上がる。ついでに上司二人の評価も上がるのだ。あたしの給料も上がる―――――――ただし、過労死するかもしれない。

「・・・まんまのネーミングですね」

 ちっちと指を振って、今や笑顔の副支部長は立ち上がって言った。


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