キウイの朝オレンジの夜
「忙しくなれば当然支部には居ない。ってことは、支部長との接点も少なくなるじゃない。朝一アポで朝礼もパス。会社訪問で夕礼も―――――」
「出来るんですか、そんなこと?」
目をぐるんと回して彼女は言いなおした。
「・・・それは流石にやばい、わね」
あははと笑う。そんな事したら事務連絡も聞けないし、流石に稲葉さんも怒るだろう。新人に示しがつかないとか言って。
「でも残業も出来るだけ二人っきりにならないようにしなさいよ。ベテランが残る曜日に限定するとか。私も出来るだけ残るようにするから」
その言葉を聞いてあたしは慌てた。
「いえいえ、それは悪いです!宮田さん子供さんが待ってるのに。あたしが残業しないようにしますから」
宮田副支部長のところはダンナさんが自営で家で仕事をしているので、普通の家庭よりは夜も残りやすいけど、それでもやっぱり子供さんはまだ小さいのだ。お母さんは早く帰った方がいい。
ため息をついてパソコンを立ちあげた。
泣いたり作戦を立てたりで、もう時間は10時だった。
「あたし閉めて帰りますから、副支部長どうぞお帰り下さい」
「そお?一人で大丈夫?」
あたしは微笑んだ。
「はい。今日はありがとうございました」
自分の鞄を持って事務スペースの電気を消してから、副支部長はあたしに近づく。