キウイの朝オレンジの夜
乙女としては枯渇しつつあるが(目を合わせないし会話をしないのでドキドキが全くないのだ)、仕事人としてはバッチリ一人前だ。
アポ数は飛躍的に増え、今までみたいに時間的余裕がないのでダラダラと営業しなくなったのが大きいのかも。
大作戦、を実行しだしてから2週間で、あたしが頂いた契約は4件。ちゃんと記念月の成果としては堂々と胸をはれる、合計7件の契約数と契約高になっていた。
「素晴らしいわ、玉ちゃん」
副支部長がにこにこと笑う。
無事に審査が通って、一番危なかった契約が成立したと教えてくれた時だ。
あたしも笑顔で言葉を返す。
「大量の良い副産物まで生まれました。あたし、もっと早くこうするべきでしたね」
指を折って副支部長にその副産物を教える。彼女は大きな微笑で、嬉しそうに頷いた。
「逃げる為の作戦だったけど、玉ちゃんの為にも支部の為にも成功して良かった。お陰でこの記念月のご褒美の旅行、いけるわよ、玉ちゃん」
保険会社だけでなく、大体どこの金融会社でもご褒美がある。
つまり、いついつまでにここまで出来たら旅行をプレゼントするよん、とか、そんなんだ。
にんじんを馬の顔の前にぶら下げて走らせるようなもので、それを嫌がる営業もいるにはいるが、そういう人には上司達は決まってこう言うのだ。
『出来てから、文句垂れろ』