キウイの朝オレンジの夜
この完全な女性の園に7年ぶりに男性が来るということで、人事が発表されてからは皆でその話題で盛り上がったのに、昨日と今日は個人的にそれどころでなくて忘れていた。
それに話題沸騰中の頃、あたしは大きな契約の詰めに走っていて、その人事異動についてのお知らせはまだちゃんと見てないんだった。
だから、もう当日の楽しみと思って誰がくるのかは知らないままにしておいたのだ。
大体本社の人間なんてほとんど知らないし、誰が来ようが仕事は変わらない。上司が変わったって同じこと――――――
が、せめて。
この酷い顔だけは何とかしないとね。初対面でこれではあまりにも非常識すぎる・・・
と思ってトイレに向かうために事務所との仕切りのドアを開けた瞬間、あたしはその「世にも酷い顔面」で誰かと正面衝突してしまった。
「―――――ぶっ!」
「・・・おっと」
思いっきりぶつかった弾みでよろけて後ろにフラフラと下がる。
そのあたしの腕を掴んで倒れるのを防いでくれた人を、あたしはぶつけた鼻を押さえて見上げた。
「――――――すみません、大丈夫?」
明るいが、この声は男性だ、と思ってハッとする。押さえた鼻にもその人がつけているらしいグリーンノートがふんわりと香ってきた。