キウイの朝オレンジの夜
朝は、ご飯を食べる時間がなくても出勤した会社でキウィを食べること。
夜は、ダイエットをしていてもオレンジか、それに変わる果物だけは食べること。
サプリメントでなしに、果実を摂取すること。香りや色を楽しむこと。
毎日それを繰り返しているうちに、それは習慣になってやらなければ気持ち悪くなる。習慣とは恐ろしい。
「・・・ヤツまで、習慣に・・・」
稲葉さんにいじられること。あの笑顔を見ること。職権を乱用しまくってあたしをこき使う美形の上司に文句を言う事。
その全てが今では「習慣」に。
あたしにはキウィやオレンジと一緒、あれが必要だ。
帰社したら、稲葉さんと向き合わなきゃならない。そろそろお経の力もなくなってきて、あたしはまたこの大きな鼓動が聞こえてませんように、と祈る状態になっている。
想いはますます深くなる。
稲葉さんの、厳しさも、めちゃ振りも、なにもかもが。今までうんざりしていたものも全て集まって、光り輝く好意の結晶へと姿を変えていく。
帰りの電車で欠伸のせいにして少しだけ泣いた。
こんなにも、想いは膨らんでしまった―――――――――