キウイの朝オレンジの夜
「そりゃそうだよね・・・。でも何で辛いの?好きな人と働けるって最高じゃない?」
あたしは手をヒラヒラ振る。
「それは、叶うかもしれないってどっかで思えるからでしょ?あたしは絶対無理だって判ってて、それなのに毎日顔を合わせるのよ。二人っきりにならないように活動時間帯は変えたりしてんだけど・・・どうもね・・・」
盛大なため息がもれた。
隣で菜々も黙ってしまう。想像したのだろう、自分のバージョンで。
あたしは稲葉さんの性格を話した。うちの新人がアタックしてケンモホロロだったことも。
二人で暗く黙り込む。酔いもあって、悲壮感が増したようだった。
バスがトイレ休憩で大きなサービスエリアに入っていく。
あたしは菜々と、とりあえずこの旅行では楽しくやろう、と誓いあって外に空気を吸いに出た。
折角会社公認で騒げるのだ。大いに楽しまなければ。
トイレに行き、飲み物を買って、タバコを吸う菜々に付き合って喫煙コーナーにいった。
まだ休憩時間は数分ある。
菜々が嬉しそうに一服していると、営業部長と他支部の支部長数人がやって来た。
「おう、神野さん」
機嫌良さ気な営業部長があたしの肩を叩く。スーツ姿でないと、5歳は若く見えるな、この人。