キウイの朝オレンジの夜
あたしは職域担当営業部時代からお世話になっている部長に微笑んだ。
「そうか、君達は同期だったっけ?神野さんがいなくなって寂しいだろう、大石さん?」
菜々は、そりゃあもう!と大きく頷く。
「契約取れないときなんかは話し相手を渇望しますので」
その返答にあはははと大きな声で笑ってからタバコに火をつけ、そういえば、とあたしに顔を向ける。
「神野さん、喜べ。君のとこの稲葉、この旅行に参加になったぞ」
――――――――はい?
あたしは言葉を失った。
固まるあたしを見て、菜々が急いで部長に質問する。
「ええっと!?浮田部長、何でですか?」
営業部長は美味しそうに一服してから、にこやかに言う。
「特別参加、だな。都合でいけない職員が多かったのもあるし、君の支部の成績が一気に上がったのもある。ま、君の成果だな」
稲葉はラッキーだ、と機嫌良く言う営業部長を呆然と見ながら、あたしは眩暈を感じていた。
・・・・まーじーで。彼がいないからこそ、存分に楽しむつもりだったのだ。それが、「恋を忘れよう大作戦」の結果で避けたい本人を旅行に参加させてしまうなんて~・・・。
あああ・・・。
急激に暗くなったあたしに気がつかず、営業部長はべらべら喋っている。菜々がタバコをもみ消して、あたしの腕を引っ張りながら上司連中に挨拶をした。