キウイの朝オレンジの夜
1回目は職域が勝った。営業部長が勝ちを取った職域担当の長嶺支部長の肩を叩いて激励する。
「よくやったぞ!」
負けた一般支部の支部長が悔しげに周りを見渡し、あ!と声を上げた。
「おーい、稲葉!次お前やれよ!」
え?と全員で振り返る。
すると、丁度今到着しましたって状態の稲葉さんと他支部の支部長4名が、ぽかんとした顔でカウンターからこっちを見ていた。
どこの団体だ、恥かしいとか思ってたんじゃないだろうか。まさか自分の会社だとは、みたいな顔で苦笑しながら近づく。
「・・・何事ですか?」
浮田部長に聞き、上機嫌の部長が説明する。その間、珍しく私服姿の噂のイケメン稲葉支部長を、その場にいた全女性営業職員が凝視しているのに気付いた。
勿論あたしもしばらく見惚れてしまった。
スーツとはまた違う私服姿に、脳内でドーパミンかなんかがあふれ出す。超興奮状態のあたしだった。
かあっこいいい~!!
シンプルな黒いロンTを着て、稲葉支部長が卓球台に近づく。その途中でぐるりとギャラリーを見回して、ヤツはあたしを見つけた。
急激に上がりだした動悸に呼吸を乱されながら、あたしは何とか立っていた。
人ごみを分けてやってきてあたしの前に立ち、稲葉さんは爽やかに笑った。