キウイの朝オレンジの夜
「開始!」
営業部長の声で、卓球が始まる。
わあーっと凄い歓声が上がった。
勝負は互角だった。ただ、イケメンは何をやっても素敵にうつるものだ。それだけで長嶺支部長の応援は女性の声が少なくて、余計意固地になっているみたいだった。
あたしは若干同情した。長嶺支部長は、どう頑張っても美男子とは呼べない。
稲葉さんも段々と真剣な目になり、スマッシュを放つ回数が増えだした。焦る長嶺支部長。
まだお酒も入ってないのに、やたらと興奮状態のゲームコーナーで、卓球勝負は山場を迎えた。
皆固唾を呑んで勝負の行方を見守る。おお~!とか、ああ~!とか、大きい声が上がり、白い玉が弾かれる。
結果は、サービスを物にした稲葉支部長の勝ち。汗を拭って爽やかに微笑み、彼は声援にこたえる。
がっくりと肩を落とす長嶺支部長を無視して、営業部長はご満悦だった。
「さすが、稲葉だ」
第3試合に入る卓球台からあたしは抜け出して、少し離れて稲葉さんを待っていた。
・・・ああ、格好良かった。何なのよ~・・・痺れたわあ・・・。
ぼーっとしながら立っていたら、声援に手を振りながら稲葉さんが人の輪から脱出してきた。