キウイの朝オレンジの夜


 ―――――・・・・ううう・・・ちょっと酔っているらしい稲葉さんは、いつもより色気まで出ている。目の保養どころか・・・目の毒だ。違う意味で。

「中身が鬼だとは、皆知らない・・」

 あたしの呟きに声を出して笑う。そして、そうだ、と続けた。

「前、楠本さんとお茶したんだって?楠本さんが電話くれたんだ。キウィとオレンジの謎が解けたぞって言うから、何事かと思った」

 ・・・謎?そんな大げさな。

 あたしは頬をかく。

「いきなり目の前に美形が現れたんで、茫然自失しまして。無意識にオレンジジュースを注文してたんです。それで理由を聞かれまして」

 あはははと稲葉さんは面白そうに笑った。

「うん、言ってた。ちょっと面白い子だなって言ってたぞ」

 楠本FPが?やった、それって自慢になるかもしれないぞ。あたしはついにやりと笑う。

「本当ですか?同期に自慢しよ~っと」

 どの辺が自慢になるんだ?って稲葉さんが言ってる最中に、今度は菜々が乱入してきた。――――――泥酔して。

「た~ま~!ここにいた、ん、だああ~」

 顔を赤くして、足元も覚束ない状態でフラフラとやってくる。あたしは驚いて駆け寄り、菜々の体を掴んだ。

「ちょっと!?飲みすぎだよ、菜々!」


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