キウイの朝オレンジの夜
稲葉さんも笑顔を消して近づく。心配しているようだった。
「・・・明らかに飲みすぎだな。職界の子だよな、部屋まで帰れるか?」
うへへへ~と気持ち悪い笑い声を上げて、菜々はトロンとした目で稲葉さんを見上げる。
「大石菜々でーす、玉とは同期なんです~宜しくお願いし、ま~す」
あたしにほぼ抱きついた格好で、菜々はだるそうに喋った。
「あれえ~・・・いなばしぶ、ちょ~・・・。何だ、玉と一緒にいたんですかあ~・・・」
突然嫌な予感が津波になって襲ってきた。お酒はがっつりと飛んでしまい、あたしは一人で慌てる。
「な・・・菜々!部屋に戻ろう、あたし送って行く――――――」
あたしに抱きついたままで、へらへらと菜々は笑う。そして稲葉さんを指差して、べらべらと喋りだした。
「怒らないでよ、玉~!あんたの大好きな支部長とったりしないんだからあ~」
――――――いやあああああ~!!
あたしは唇をかみ締める。突発的に真っ赤になったけど、菜々を支えているので稲葉さんには背中を見せた状態なのだ。それは救いだった。
「菜々ってば!しっかりしてよーっ」
彼女にしがみつきながら必死で叫ぶも、泥酔した菜々には届かないらしい。にこにこと笑って菜々はあたしの足元を簡単に崩していく。