キウイの朝オレンジの夜
「本当いーい男、ですねえ、いなばしぶちょ~。彼女いないんだったら玉なんてどうですかあ~?支部長への恋心を忘れるために仕事に没頭しているカワイソーな女なんですう~」
うっぎゃああああああ~!!!
あたしは半泣きだ。酔っ払いにしがみついて、何とか連れて行こうと全力を出してはいるけど彼女は動かない。
稲葉さんがどんな反応をしてるかなんて、恐ろしくて振り向けない。
何でもいいから早く逃げたい。
ってか、この場から消えてしまいたい。
ああ・・・神様。
「なっ・・菜々ってばー!!」
「この子、支部の移動まで企んで・・・」
ついにあたしは固まった。ざあーっと全身から血が抜けていくのが判った。
「―――――何?」
稲葉さんの声が聞こえた。
あたしは体を震わす。動悸も凄いし、震えも半端なかった。そのあたしの震えが伝わったか、それとも空気が一瞬で冷えたからか、菜々がやっと少し覚醒したらしい。
「支部の移動?移籍ってことか?」