キウイの朝オレンジの夜
「まだ宴会場盛り上がってるぞ」
「ここは客室です~!」
しばらく沈黙があって、やたらと静かな稲葉さんの声が聞こえた。
「―――――確かに客室で、夜の10時18分で、静かだな。・・・暴れたら、目立つよな」
何だと!??
「あばっ・・・!?」
「ドア蹴っ飛ばしたら、旅館の迷惑だよな?」
やりそうだあああああ~!!!その企んだような声にビビッて、あたしは咄嗟に鍵をあけてドアを開いてしまった。
開いて、目の前に腕を組んで立つ稲葉さんを見てハッとした。
・・・・あああああ~・・・ハメられたああ~・・・・。
支部長はあたしの横を通り抜けて部屋に入ってきた。腕を組んだままで見回し、聞く。
「誰と使ってるんだ?」
「・・・一人です」
あたしはもそもそと答える。ううう・・・これから追求が始まるんだろうなあ~・・・辛すぎる。どうしよう、今のうちに菜々の部屋に逃げるか?
考えながらドアを振り返ると、入口まで戻ってきた稲葉さんが横から手をのばして閉めたところだった。
・・・・ダメだ。退路は断たれた。キッチリ鍵までかけられてしまった。