キウイの朝オレンジの夜


 去年のクリスマスに買ったばかりのこの下着セットを稲葉支部長にみられてしまった時のことが鮮やかに蘇った。

  うわああ~ん!体をよじって稲葉さんのキスから逃れる。その拍子に浴衣は更に崩れ、上半身はほとんど剥き出しになってしまった。

 確かめるように胸を揉んでいた手が背中に回ってブラのホックに掛かる。あたしは焦って、体重をかけてその手を阻止し、誘惑に負けそうになる意識を引っ張り上げて叫ぶ。

「ちょちょちょっと、待って・・・支部長!」

「嫌」

 あたしの胸元に顔を埋めそこら中にキスをしながら彼は言う。さらさらの髪が首筋をこすり、敏感になった肌を刺激した。

「嫌って・・・ひゃっ・・・あのっあのっ!一体何で・・・」

 あたしが何としても抵抗するつもりだと判ったらしく、目元を緩めて稲葉さんは顔を上げる。そして捕まえていたあたしの両手を離し、有り得ないと呟いた。

「・・・は?」

「まさか、まだ判らないとか言うつもりか?・・・傷付くなあ、それ」

 自由になった両手で浴衣を胸元まで引き上げながら、あたしは真っ赤な顔で彼を見上げる。

「・・・へ?」

「好きな部下を抱こうとしてるんだ」

「・・・」

「俺、惚れてもない女性に簡単に手を出す男だと思われてたのか、もしかして?」


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