キウイの朝オレンジの夜
熱くなった顔に両手でパタパタと風を送って冷ます。
上機嫌になった菜々が、朝風呂行こうよ!と誘うのを断って(だって、キスマークが!!)あたしは一人部屋で帰りの支度をする。
今日の予定は午前中は皆で観光で、お昼を食べてからバスで支社に戻り、そこで解散だ。
朝食会場で遠くに見かけた稲葉さんは眩しい笑顔であたしを見て、片手を振ってみせた。
あたしは頑張って何とか笑顔を返す。だけど引きつっているのが自分で判った。パッと背中を向けて、足を速めて自席に向かう。
・・・眠れたのかな、稲葉さん。だとしたらちょっと悔しい・・・。
菜々と並んで朝食を食べ、そのままお土産ものを一緒に物色した。
だけど放心状態で全然買い物は出来ずだった。
最近旅行もしてなかったあたしは観光だって楽しみにしていたのだけれども、ちっとも集中出来なかった。
だって、ふと気付くと。
この目はいつでも彼を探して彷徨う。
そして見つけると、今度は見てられなくて全力で避ける。
あっちからの視線を感じると背中を向けてしまう。
見たいのに見れない。気になるから他の事が何にも手につかない。・・・・困った。
そんなことでぐったり疲れて、帰りのバスは帽子を被って寝ていた。
稲葉さんは来た時と同じで他の特別参加組みと誰かの車で帰社だったので、安心して夢の中へ突入出来たのだ。トイレ休憩にも起きなかった。