キウイの朝オレンジの夜

 指が絡まる日常へ。



「玉!た~ま~!!起きて、着いたよ~!」

 菜々が耳元で叫ぶ。

 あたしは身じろぎをして、更に帽子を深く被る。

「・・・やかましい・・・。もうちょっと寝かせて」

「バスの運転手さんが可哀想でしょうが!早く起きなさい、バカ言ってないで!」

 体をゆすられて、やっと頭が起きた。

 がばっと身を起こしてみると、もう既にバスの中にはあたし達だけだった。

 菜々が呆れた声で言いながらあたしをせかす。

「爆睡通り越して昏睡だったよ、あんた。早く降りなきゃ。もう自然解散で、皆ほとんど居ないんだよ~!」

「うわあごめん!」

 あたしは垂らしてたらしい涎のあとを急いでぬぐって、立ち上がった。

 荷物を持ってバスを出る。運ちゃんにもちゃんと頭を下げておいた。

 夕方の太陽がビル群の間から光りを放っている。それに目を細めて周囲を見回すと、確かにもうほとんど誰もいなかった。

 バスから離れながら菜々が言う。

「玉これからどうするの?お茶して帰らない?また明日からお仕事だし―――――」

「神野は俺に貸してくれないか、大石さん」

 どこからか声が飛んできて、二人で驚いて見回す。


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