キウイの朝オレンジの夜
 

 支社の駐車場に停めていたらしく、稲葉さんのシルバーの車に乗せられて街を走った。

 繁華街を抜けてすぐスピードが落ちたから、え?と思っていると、車はそのままホテルに突っ込んだ。

「支部長?」

 ミラーを見ながら一度でバック駐車を決め、稲葉さんがため息をついてから呟く。

「・・・だから、プライベートでは・・・」

・・ああ、はいはい。

「稲葉さん。えーっと・・・帰るのでは?」

 エンジンを切ってドアを開け、横目であたしを見た。

「家はダメ、集中したいから」

 ――――――――はい?何言ってるのか判らない。送ってくれるんじゃないの?

 あたしは荷物を抱えたままぼーっと考える。

 だけど急かされて、あたしはとりあえず車を出る。ぐいぐいと背中を押されて部屋を選び、エレベーターに乗ったところでいきなり気付いた。

 ってここ、シティホテルやビジネスホテルじゃなくてラブホじゃん!!今あたし部屋選んだ!?そういえば!!

 隣に立つ稲葉さんは全くの普通の顔で、じっとエレベーターの表示を眺めている。

 集中って・・・!あたしは突如真っ赤になる。きゃああああ~!待って待って、もうなんでこんな急な・・・。


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