キウイの朝オレンジの夜
「あん?」
机の上に肘をつき、その手の平に顎をのせた状態であたしは眉間に皺を寄せた。
そしてすぐにその皺を指で伸ばす。
ダメダメ、28歳は十分にお肌の曲がり角を越えている。ただでさえ固い肌に皺が刻まれてしまったら目もあてられないぞ、あたし。
指の腹で皺伸ばしをしているあたしの耳に暗い光の声が響いた。
『喧嘩ばっかりだし、もう俺疲れたわ、ほんと』
喧嘩の相手があたしであるなら疲れるのはお前だけじゃねえだろ!と思ったあたしはむかついた。
で、眉間に皺を寄せないようにだけ気をつかって、イライラと言ったのだ。
「要点を言って」
大体、能率も効率も悪い男なのだ。だから午前様になるような残業をする羽目になるんだよ!何がいいたいのかちっともわからない。
カッカしながらあたしがぴしゃりと言うと、更に機嫌を損ねた声で、光が唸った。
『別れようって言ってんだよ。今までお前に付き合ってこれた自分を褒めてやりたいよ、俺は。でもよく考えたら疲れる女と我慢して一緒にいることはねえんだよなって、気づいたんだ』
眠気でぼーっとしていたけど、売り言葉に買い言葉の口喧嘩ばかりしていたので反射的に言葉が出た。
「それはおめでとう。気付くのに5年もかかるなんて、やっぱりあんた馬鹿だったのね」