キウイの朝オレンジの夜
最初は、喜んだ。わーい美形だ~!と、皆でラッキーなどと手を叩いて喜んだものだった。
3日目には自分の事務所に帰りたくなった。キラキラのイケメンでスーパー営業の「中央の稲葉」は、愛嬌たっぷりの笑顔の下は超絶厳しい教官だった。
自分が受けてきたエリート集団育成プログラムをそのまま持ち込んで、あたし達に強要したのだ。
仕事に厳しい姿勢で臨む、というのは社会人としては素晴らしいだろう。真面目である証拠でもある。ただし、お祭り気分で研修にきていたあたし達には地獄のような苦しみとなって現実が襲ってきた。
泣かなかった日はない。毎日ぼろぼろになって教育に耐えた。
15人で参加したその研修で、2年後ちゃんと生き残って自分の支社に戻ったのは、何とあたしをいれて5人だけだった。
あとは厳しさに耐えられず退職してしまった。
鮮明に、その忘れたい過去が頭の中を駆け巡り、あたしは一瞬眩暈がする。
ぐっとお腹に力を入れて、何とか椅子の上での姿勢を保った。
確かに、あの教育は効いた。あたしの営業力は飛躍的に上がったし、忍耐力も前の比ではなくなった。だからこそ、浮き沈みの激しい保険の営業の世界にいて、未だ辞めずに生き残ってこれたのだと感謝もしている。
だけど・・・・・。
自分の上司となると、話は別だっつーの!!!