キウイの朝オレンジの夜
6、続いていく毎日の習慣。

 狐の嫁入り。



 それを知ったのは、翌朝だった。

 出勤してまず最初に見る個人のボックスに入っていたお客様からの連絡下さいメモ。

 昨日は梅沢さんとのアポで午後にここを出発してから戻らなかったから今まで知らなかったそのメモには、事務員の横田さんの可愛いらしい字で、注釈が添えられていた。

『契約者の山下様、本日亡くなられたそうです。ご遺族の方から着電。手が空き次第、連絡下さいとのことです』

 あたしは上司席の後ろにある個人ボックスの前で座り込む。

 呆然としていた。


 ・・・山下のおじいちゃん、亡くなったんだ・・・。


 まだ副支部長とあたししかいない時間で、事務所内の植木に水を遣っていた副支部長が、さっきまで喋っていたあたしの声が聞こえなくなったのを気にして声を飛ばしてきた。

「たーまー?どうしたの?」

 あたしは床に座ったままでゆっくりと振り返る。

「・・・地域の、よくしてくれてたおじいちゃん、亡くなったって」

 副支部長は一瞬固まって、それから水遣りをやめてあたしの方へ来た。

「よく話してたあの方?それは残念だったわね。いつの話?」

 あたしはメモを差し出して立ち上がる。

「昨日の午後です。横田さんが帰るまででしょうね。昨日はアポから直帰したので、気付かなかったんです」


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