キウイの朝オレンジの夜
メモを読んで副支部長はため息をついた。
「死亡保険金の手続きがあるのね、この方。同行は必要?」
「いえ、必要ありません。もう古い契約で、終身の100万だけが残ってる方でしたから」
契約者が亡くなって死亡保険金が支払われる時、その額があまりに大きいと、上司に同行をして貰う。
働き盛りの30代から50代が亡くなると金額も大きい。そういう時はお供えを持参して上司と行くこともあった。
だけど、このおじいちゃんは長いこと持っていた保険の、もう医療も外れたシンプルな型のものを死ぬときまで持っている状態だったので、遺族も保険会社にそんなことは求めない。
あたしは電話を入れて、書類を持って訪問するだけでいいのだ。
二人で暗くなって黙っていたら、稲葉さんが出勤してきた。ドアを開けていつものように爽やかに、おはよう、と挨拶をして、あたし達の様子に気付いて足を止める。
「―――――何だ?」
おはようございます、と副支部長が挨拶を返す。あたしも倣って挨拶をし、それから言った。
「お客様が亡くなられたようで。・・・すみません、昨日出来てないので、あたし今から連絡入れます。朝礼遅れたら申し訳ないです」
上司二人に頭を下げ、携帯を持って2階に上がる。
そして、一つ深呼吸をして電話をかけた。