キウイの朝オレンジの夜


「父も喜んでましたから。頑張ってる人を見ると応援したくなるねってよく言ってました」

「お別れに呼んでくださってありがとうございます。あたしは隅っこでお別れさせていただきますので」

 彼女はまた微笑んだ。そして、そちらの会社には、長い間、我が家がお世話になりました、と言って正座してお辞儀をした。

 一つまた、自然解約に居合わせてしまったな、あたしはそう思いながら辞した。

 お葬式には沢山の人。

 山下のおじいちゃん、やっぱりこれが人柄の結果だよね、とあたしは感心する。

 喪服の人の波の間をたまに風が吹く。

 父が亡くなった時もそうだったけど、誰かが居なくなるときは風が吹くのかも。

 人はただ、居なくなるんだ。

 棺が霊柩車に吸い込まれる、その光景をあたしは遠くから見ていた。

 ・・・山下さん。本当に、お世話になりました。去っていく車に頭を下げる。

 あたしの大切なお客様。

 ゆっくり眠ってね、山下さん・・・。


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