キウイの朝オレンジの夜
あたしの栄養源。
結局、びしょ濡れになった。
もう暗くなってしまっている夜の6時。あたしはやっと支部へ足を向けた。
途中の公衆トイレでハンドタオルで顔をぐいぐい拭って水で洗い、真っ黒になっていた目の周りを落とした。
だからあたしは全身雨に濡れた上にほとんどスッピンだった。
夕日が差している間は濡れても寒くなかったけど、何と言ってもまだ春なのだ。やっぱり体温は下がってしまい、寒さを感じていた。
前髪から滴が落ちる。
あたしはたらたらと支部まで歩いた。
まだ誰か残ってるかなあ~。この格好で電車乗ったら目立つだろうなあ。・・・あ、そうだ。研修、大丈夫だったかなあ。稲葉さんが行くって言ってたけど、別に上司がいったって意味ないのでは・・・。
そんなことを考えながら駅前を歩いていると、会社の建物の前で立つ、長身の影に気がついた。
――――――・・・・あ。稲葉さん、だ・・・。
彼は腕を組んで立ち、あたしをじっと見ている。
距離を開けて立ち止まり、あたしは口元で少しだけ笑う。
そしてやっと気付いた。・・・そっか、心配してくれてたんだな、って。
あたしったら連絡もせずに、昼前から行方不明だったわけだ。よく考えたら携帯の存在すら忘れていた。