キウイの朝オレンジの夜
もしかして着信が凄いことになってる?メールも大量だったりして。
あーあ。叱られるのかも、あたし。
スタスタと歩いてきて、彼は眉をしかめる。
「・・・やっと戻ってきたと思ったら、ずぶ濡れじゃないか」
「すみません、遅くなりました」
あたしは彼を見上げて微笑む。そして続けて言った。
「心配かけましたか?ちょっと寄り道をしていたら雨が降って来たので」
稲葉さんは眉間の皺を消して、ただじっとあたしを見詰めた。
怒ってるようでも呆れているようでも喜んでいるようでもなかった。表情はなかったけど、何となく優しい雰囲気がした。
「・・・おいで」
あたしの鞄を奪い取って、前を歩き出す。
わけが判らないままであたしも後をついて歩き出した。
支部の中に入るのかと思ったら、彼はそのまま自分の車へ向かう。
「あれ、支部長?事務所入らないんですか?」
あたしは首を傾げて聞く。
彼は無言のまま、車の助手席のドアを開ける。
・・・・乗れってこと、らしい。
あたしは瞬きを繰り返したけど、何も聞かずに乗った。まあ、何でもいいや。そんな気分だった。