キウイの朝オレンジの夜


 今日は金曜日で明日は休みだし、珍しくアポも入れてない。このあとどこへ行くのか知らないが、行き先が支社で営業部長に研修の欠席を詰められるのだとしても時間的には大丈夫だ。

 どうにでもなれ。

 そんな気持ちで助手席に座った。

 だけど、連れて行かれた場所は小奇麗なマンションだったから、驚いた。

 うん?ここは、どこ?

「行くぞ」

 それだけしかいわず、稲葉さんは先に立ってエレベーターのボタンを押す。

「えーっと、稲葉さん?ここどこですか?あたしは一体何をしにここへ?」

 さすがに疑問が大きくなったあたしが追いかけながら聞くと、彼はちらりと振り返ってあっさりと言う。

「俺の住まい」

「は?」

 思わず立ち止まったあたしの手を掴んで引っ張って、エレベーターに乗り込む。

「支部長の部屋ですか!?」

 あたしの大声に、簡単に頷いて、人差し指を立てる。

「今日は直帰扱いだ。だから、今はもうプライベート」

 ・・・もう、一々細かいな!役職名で呼ぶなっていってるんだろう。でも驚くのに忙しいからイライラは後回しにすることにする。


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