キウイの朝オレンジの夜
あたしは慌てて玄関で靴を脱ぐ。
何せ全身びしょ濡れだったから、ストッキングが張り付いて不快だった。靴を脱ぐは脱いだけど、そこから先に進まないあたしを怪訝そうに見て稲葉さんが聞く。
「どうして入らないんだ?」
「・・・・びしょ濡れなんです。お部屋、汚れます」
ああ、と言って、彼は一番近いドアを指差した。
「そこが風呂。先に行ってて」
・・・先に行ってて?あたしは言葉に引っかかって変な顔をしたけど、とにかく本気で冷えつつあったから、言われた通りにそのドアを開けた。
洗面所があったので、お風呂の中を確認してから服を脱ぎだす。
雨で重くなったスーツを脱ぐと、それだけで気分もすっきりした。畳んで空っぽの洗濯籠に入れる。スカートも脱いで、シャツも脱いだところでいきなりドアが開いた。
「うひゃあ!?」
ビックリして飛び上がる。同じくスーツを脱いでシャツになっていた稲葉さんは、あたしの反応が気に入ったような楽しそうな顔をしていた。
「ほら、早く入って。お湯張りながらシャワー出来るから、温まらないと風邪引くぞ」
「わ、判りましたから出て行ってください~!!」
「何言ってんだ、一緒に入るんだよ」
「ええ!?そんな・・・結構です!」
ぶわっと照れて叫ぶあたしを見て、ヤツは嬉しそうににやりと笑う。