キウイの朝オレンジの夜
とにかく、こんな状態で顧客のところにはいけないと家に帰った。
フラフラと居間に顔を出したあたしを見て、母親が驚いて飲んでいたお茶をテーブルに置く。
「・・・ビックリした。幽霊かと思った。どうしてこんな時間に帰ってくるの?仕事は?」
あたしは鞄を椅子において、簡潔に説明した。
「一気に言うわ。説明も質疑応答もなしよ。光にふられて雨に打たれ、出勤したら新しい支部長はあの鬼教官の稲葉さんだった。以上、あたしはお風呂に入る」
後ろで母親の、あらまあ、という呟きが聞こえた。
本当にそう。あらまあ!だよ・・・。
お風呂に入り、全身を洗い、多少眠気はあったもののちゃんと化粧もしなおすと自動的に気合が入った。
――――――支部長命令は、無視しよう。
無心に出発準備をしているうちに気持ちが落ち着いた。とにかく、今日の予定は予定通りにクリアすること。それから対策を練ろう。
いつも通りのあたしになって居間に再登場すると、同じ格好のままでいた母親が人差し指を立てた。
「一つだけ!」
「オッケー」
あたしは鷹揚に頷く。