キウイの朝オレンジの夜
就業時間は朝の9時から夕方5時までと決まっている。だけどあたしはいつでも9時くらいまでは仕事をしていた。動ける体だし、会社帰りのサラリーマンを捕まえるにはそのくらいでなければ無理な話だ。
主婦の皆様はやはりその点難しいので昼間の努力が契約に結びつく。あたしは労働時間が長いため、普段昼間はあまり仕事をしないのだ。が、これからはそうも言ってられないじゃんよ・・・と駅前のスーパーの青果売り場でため息をつく。
支部長が、いつでも支部にいてしまう・・・。顔をあわすとロクなことがないに決まってる。あーあ・・・どうしてあたしはさっさと光と結婚してなかったんだろう・・・。
ダンナの世話と家事を理由に帰ることも出来ないじゃん・・・。
腕に持ったカゴには大量のキウィとオレンジ。あたしにはビタミンが、それも大量のビタミンが必要だ。
納豆でイソフラボンも摂取するのが望ましいが、納豆はどうにも好きになれないのでとにかくキウィとオレンジの摂取だけは自分に義務付けているのだ。
レジを通し、持参しているエコバックに仕舞って夕方の駅前で途方にくれた。
これからどうしたらいいんだ。美形の悪魔がいる支部には帰りたくないし・・・それに、言われたアポ取りだって一応は手をつけないと明日の朝が恐ろしい。
夕焼けの時間がすぐそこまで来ていた。
疲れた。それに、眠い。
寝不足で、鬼とも再会を果たしたあたしはもう崖っぷちの精神状態だった。
・・・光は、今日何時に家に帰るのかな。あたしに電話くれるかな・・・。やっぱり、そのまま終わっちゃうのかな・・・。
夕焼け前のピンクの空に心が解け出す。
だめだ、このままじゃあたしは凹みモードに入ってしまう。