キウイの朝オレンジの夜
彼は主婦や子供には懐が大きかった。前と変わらず子供達は支部に帰ってくることが許されたし、他の営業の邪魔をしないようにと2階の一室を放課後の子供達に解放して、そこで宿題をさせたり高学年に低学年の子守をさせたりしたのだ。
それによってシングルマザーや主婦の営業達が仕事に集中出来る時間が増え、成果が増えだしたのには驚いた。
やはり仕事やその中身には厳しかったけど、公平な扱いと親身なアドバイスによって瞬く間に事務所内全営業(あたしは除く)の信用を勝ち取り、名実共にうちの支部の長になったのだった。
あたしはそれを、感心してみていた。
新人もベテランも中堅も、皆素直に支部長に従って、結果、成果を手に入れて帰ってくるのが嘘みたいだった。
皆が興奮して褒め称えるのを、あたしはうんざりして眺める。だって―――――
「・・・何であたしには厳しいままなんでしょうか・・・」
喫煙はしないが自販機があるので喫煙場所によくいるあたしが、けだるくタバコをふかしている笹口さんに愚痴を零す。
彼女はにやにや笑いながら言った。
「可愛がられてるって思っておきなさいよ、玉ちゃん。でないと身がもたないわよ」
あたしはぶすっと答える。
「もう死にそうです」