キウイの朝オレンジの夜


 実際、あたしは気疲れと過労で体重が落ち続けていた。他の皆と同じようにあたしも成績は上がってはいたけど、他の皆と違うのは、働く量だ。

 今では夜の11時前に帰宅できることがないのだ。彼の指導によってノルマとその為の準備が増えていき、飯抜き残業が膨大な量になっている。

 ただ文句が言えないのは、優秀な支部長様はあたしより更に遅く帰っていることを知っているからで―――――

 副支部長すら帰った事務所でオレンジを食べ続けるあたしに呆れて突っ込みをいれてくるくらいには、二人で缶詰になっている夜が多かった。

「・・・神野。夜になるとひたすらオレンジばかり食べるの、何で?」

 ネクタイも緩めて袖をまくった残業モードの稲葉さんが(無駄に色っぽい。その点でも超迷惑)ある晩に聞くから、気が立っていたあたしはイライラと答えたのだ。

「働く女子には大量のビタミンが必要なんです!!」

「・・・だから、オレンジ?」

「朝はキウィを摂取します!話しかけるのやめて貰えます?この設計、難しくて集中力がいるんですから!」

 ガタン、と音がしてあたしが顔を上げると、いきなり大股でやって来た支部長が後ろから包み込むようにパソコンを覗き込んだからドン引きしたんだった。

「うひゃあ!?」

「耳元で叫ぶな。――――――条件は?」


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