キウイの朝オレンジの夜
どうか今日はついているらしい渡辺FPの運にあたしものれますように。お願い神様。やる気を根こそぎ取るようなことしないで。
確かに道はすいていた。理由がわからないから対策も練れず、車の中では会話も弾まなかった。
神様には祈った。
そして、渡辺FPも全力で頑張ってくれた。
だけど、やっぱり解約は防止出来なかった。
なぜなら、明日でこの会社は、事実上倒産するらしい。
乗り切れると思ったが、甘くなかった。君には本当に迷惑をかけて申し訳ない、と年配の社長に何度も謝られたけどあたしは何とも言えなかった。
保険どころの騒ぎじゃない。
これからこの人は、従業員のことや後始末について考えなければならないことが山積みなんだと判ったから。
従業員の福利厚生の為にと決めてくれた経保だった。若輩の女性営業なんかとバカにせずにいつでもキチンと話を聞いてくれ、愛ある突っ込みや疑問などを真剣に投げかけてくれた社長だった。
自分の零れ落ちた成績より、それよりもこの人に笑っていて欲しかったな、とぼんやり思っただけだった。
「力及ばず、申し訳ない」
本当にすまなそうな顔でFPが言うから、あたしは慌てて頭を下げた。
「いえ、お忙しいのに飛んできてくださってありがとうございます」