キウイの朝オレンジの夜
にこりと微笑んで、手塚さんは立ち上がった。
「私は帰るわね。雪がひどくなるといけないから。・・・玉ちゃん」
「はい?」
顔を上げたあたしにゆっくりと手塚さんが言う。
「知ってるわね、いい時も悪い時もいつまでも続かないって。頑張ったけどダメだった。だけど、またいいこともあるはずよ。前を向くことは忘れないでいきましょうね」
副支部長がまた瞳を潤ませている。
泣き虫の上司に苦笑して、あたしは頷いた。
「暫く凹みますが・・・大丈夫です。来年はもっと大きな経保狙います」
にっこりと頷いて、営業生活50年の大ベテランは帰って行った。
支部長への説明についていってくれると副支部長が言うので、甘えることにした。さすがに一人では気力がもたないに違いない。
冷え切った階段をゆっくりと上る。ヒールがこつこつと音を立てた。
二つある部屋の奥のほうに明りがついていた。
副支部長がコン、と一度ノックして、ほぼ同時にドアを開けた。
「稲葉支部長、少しお――――――」
話が・・・と続けようとしたらしい宮田副支部長が止まった。
あたしも彼女の背中越しに見た。