キウイの朝オレンジの夜
電気が煌々と明るいその小さな元応接室の真ん中で立つ稲葉さんに抱きついているのは繭ちゃん。
部屋の真ん中の二人はひっついたままでハッとあたし達入口の邪魔者を見た。
「―――――――あ・・・」
支部長に両腕を回していた繭ちゃんが、弾かれたように離れる。両腕を下ろして突っ立っていた支部長が、二重の垂れ目を開いて驚いた顔であたしと宮田副支部長を見比べた。
「・・・・新谷さん?とっくに帰ったのでは?」
いつもの明るくて華やかな声を低くして搾り出した隣の宮田副支部長を、あたしは驚いて思わずじっと見た。
小柄で細い彼女の体から何かが噴出したようだった。
普段は繭ちゃんと呼んで同行している新人を睨みつけ、するりと腕を下に向けて言った。
「仕事をしているようには見えないし、今日は帰りなさい。雪が降ってきてるから気をつけてね」
抑揚のないその言い方に、怒りと冷たさを感じる。繭ちゃんも感じたのだろう、一度支部長をちらりと見上げると、小走りであたしの横をすり抜けて階段を駆け下りて行った。
「・・・あー・・・宮田さん。説明してもいいかな」
腰に両手をあてて首を垂れた稲葉さんがゆっくりと口を開いた。
今や怒り全開にして立つ小柄な宮田副支部長の冷たい冷たい声が響いた。
「説明?見た通りでしょう、それで十分ですので言い訳は結構です。お邪魔してすみません、支部長。ですがここは職場ですので誰かといちゃつくなら他所でお願いします!」