キウイの朝オレンジの夜
・・・怒ってるわ~・・・・。職業上のえぐい痛みを経験したことすら一瞬飛んで、あたしは珍しいものを眺める。
宮田さん・・・怒るんだ~・・・。
あたしがまじまじと進行中の修羅場を見ていると、盛大なため息をついてモテ男稲葉がきっぱりと言った。
「見たことの全てが事実だとは限らない」
いつもの明るい笑顔はなく、厳しい顔をしていた。きっと支社長との面談はこういう真面目な顔なんだろうと意地悪く思う。
ま、笑顔だろうが真面目顔だろうが、端整な顔はやっぱり端整な顔だけど。平凡代表のあたしは心の中でそう付け足した。
「俺がここで書類と格闘していると、新谷さんがやって来た。明日クロージングの設計をみてくれと言うからアドバイスしていた。もう帰りなさいと言うと、いきなり抱きついてきて、そこにタイミング悪く、いや、良く―――――」
手をあたし達に向けて振った。
「――――――君達が来たんだ。言い訳じゃない、説明だ。実際のところ、乱入には感謝している。・・・それで?」
「は?」
支部長の話を頭の中で噛み砕いていたらしい宮田副支部長は、追いつけなかったかマヌケな声を出した。
「何の用だ、ふたり揃って?」
首を傾げる稲葉さんを見ていたら、何だかあたしは急に疲れを感じた。