キウイの朝オレンジの夜
さっきの説明の通りだったんだろう。きっと、繭ちゃんが一計を案じてアタックにきたのだろう。
だけども。
よお~っく考えたら、今晩のボロボロのあたしにあれはきつかった。アドバイスや同行が欲しい時におらず、やっと話せるかと思ってきてみれば、相手は若い美人に抱きつかれていた。本人がそれを喜んでいようがいまいが、今のあたしの状態よりはいいことは確実だ。
・・・・ムカつく。
・・・・むーかーつーくううううう!!!
さっきまで完全な傍観者だったあたしがいきなり睨みつけたので、支部長は一瞬仰け反った。
「・・・神野?」
宮田副支部長もいきなり激変したあたしの雰囲気に気がついたようだった。振り返って、感情沸騰中のあたしを見上げる。
「あ・・・あのー・・そうなんです、一件大変なことがありまして―――――」
声を元に戻して宮田副支部長が焦ったように話し出すのを、あたしは言葉で乱暴に遮った。
「7月戦に貰った経保がぽしゃりました!渡辺課長に同行して頂きましたが、解約防止には至りませんでした。解約用紙への記入は済んでます!以上です!あたしは帰ります!」
呆気に取られる稲葉さんを更に一度睨みつけて、宮田副支部長に頭を下げる。
「お付き合い下さってありがとうございました。それに、解約になってしまって申し訳ありません!お疲れ様でした!」
そしてもう一人の上司には声もかけずに1階めがけて階段を駆け下りた。後ろで二人の呼び声や掛け声が聞こえたけど、あたしは無視した。
どうぞ、宮田副支部長に聞いてくれ。彼女はあんたと違って涙を流して詳細を聞いてくれたのだから。