キウイの朝オレンジの夜
あたしはフラフラと駅前を歩き、バス通りの小さな公園に入ってベンチに座る。男達が喋りながらついて来ているのでこのまま駅に向かうのもなあ、と思ったのだ。
吐いた息が白く塊になって暗い空に上っていくのを見ていた。雪は歩いている内にやんで、しんしんと冷える空気が夜を漂っている。
「・・・えー・・・稲葉支部長」
あたしの近くまで男達が来たので、ベンチに鞄を置いたままであたしは立ち上がる。
「何で・・・どうして判ったんですか、あたしがあそこにいるの」
白い息を吐きながら支部長はあたしを見下ろす。寒さなんて全く影響がないみたいだった。可愛げがねーぜ。
「宮田に聞いた。今日はもしかしたらあそこで飲んでるかもしれませんよって」
・・・くそう副支部長。教えちゃったのね、あたしの行きつけを。何回か一緒に飲んだことがあるから、もしかしたらと思ったのだろう。今日は飲んでもおかしくない状態だと。
あたしは肩をすくめた。
「そうですか。それで、何のご用ですか」
「・・・話しを聞く必要があると思った」
あたしは顔を上げて美形の上司を見詰める。笑ったりなんかしてやらない。無表情のままで呟いた。
「明日、職場でいいじゃないですか。逃げませんよ、経保の解約くらいで」
稲葉さんは黙ったままあたしを見下ろしている。光がこちらに注意を向けたのが気配で判った。
「酔い潰れていたらしいけど?」