キウイの朝オレンジの夜
今は冬で、もうこの人は彼氏じゃないんだ。
でも契約を貰った時は、あの夏の夜には、一緒に喜んでくれた人なんだ。
疲れた体に冷たい冬の風。あたしは公園で突っ立って、途方に暮れたまま。
お酒が体を回っていてふわふわしていた。頭の中では記憶の引き出しが次々と開けられて、どばーっと、凄い勢いで色んな場面が流れ出した。
そのほとんどに、この人が居た。
居たんだなあ・・・。
ついに、あたしは泣いてしまった。
光が傍に来て、泣きじゃくるあたしの手を引っ張って歩き出し、もうここしかねーし、と一番近いラブホテルまで連れて行った。
鼻をぐしぐし言わせながら、エレベーターの中であたしは言う。
「・・・あ、あんたとは寝ないわよっ」
「俺だって抱いてやらねーよ」
ブチブチ言い合って、でも手は繋いだままで、ちゃんと抱き合う為に来たこともあるラブホテルの部屋に入って行った。
その夜、お風呂に別々に入って温まり、ご飯を食べていなかったらしい光の為に今度はあたしが払うと料理とお酒を色々注文して、けばけばしい内装の部屋の小さなピンク色のソファーで一緒に食べた。
途中母親にメールで帰宅しない旨を告げる操作をしている時以外、ひたすら声を出していた。