キウイの朝オレンジの夜
明るい表情でドアを開ける。
今朝はここから徒歩10分のラブホからの出勤だったのもあって、あたしが一番乗りだった―――――――と思ったら、違った。
「おはよう、神野」
あたしは事務所に入って一歩目で、足を止めた。
・・・稲葉支部長、いらっしゃってたんですね。
いつもは明るくてよく通る上司の声が、今朝は何だか固い。あたしは振り返って鬼支部長の机を見た。
「おはようございま・・・す。支部長」
真顔の稲葉さんと目が会って、思わず声が途中で切れてしまった。笑顔がないぞ。・・・つーか、めちゃ怖いんですけど。
整っている顔の人間が無表情だと、人形みたいでマジで怖い。
あたしは既にびびりながら、自席へ向かう。そのあたしから目を離さずに、支部長席から稲葉さんがじいーっと見ている。
「・・・あの・・・何でしょうか・・・」
「何が」
抑揚つけずに即行で聞き返されて、あたしは更にびびる。
・・・やめてよおおお~!折角、光にも元気を貰って新たな気持ちで出勤してきたのに、いきなり機嫌の悪い鬼上司の相手なんか御免だよー!
「・・・何でも、ないです・・・」
居た堪れなくてあたしはコーヒーを淹れに給湯室へ向かうことにする。まだ8時前だもんな~・・・当分誰もこないよね。どうしよう、コンビニにでもいっとこうか?あ、でも財布持ってこなかった!