キウイの朝オレンジの夜
5年付き合って、28歳で、ドキドキはない変わりに何でも判った間柄だったから、結婚する相手なんだろうと思っていた。
それはあたしだけかもしれなかったけど、でも。
「なのに、こんな終わり方かあ~・・・」
枕をいたぶるのをやめて、あたしはぼんやりと呟いた。
ちらりとテーブルに目をやる。
ヤツのために昨日作った晩ご飯は、そのままにして帰ってやろう。あたしだって文句ばっか言ってたわけじゃないって最後だけでも見せ付けたい。
よっこらしょ、と掛け声つきで立ち上がって、あたしは勝手知ったる他人の家で、出勤準備を始める。
男に振られたって寝不足だって頭痛がしたって、仕事の日は出勤する。それが社会人の宿命だ。
光の部屋を出て、鍵はいつものようにメーターボックスに隠す。
あたしは少しだけそこで立ち止まり、長年見てきたこのドアを見詰めた。このドアを開けた光が、笑顔だったのはいつの事だろう・・・。にっこり笑って、待ってた、って言ってくれたのは。その言い方に喜んでいるのを感じられたのは。
・・・かなり遠い記憶だったと思う。
じっと見詰めていて、ゆっくりと深呼吸をした。そして背をむけて、歩き出した。
サヨナラ、光。
サヨナラ、あたしの5年間。