キウイの朝オレンジの夜


 午前中は、あっさりと平常状態になっている支部長と副支部長と面談をして、解約に至るまでとこれからのことを話し合った。

 ボールペンを転がして、稲葉さんは息をついた。

「・・・仕方ないよな。他をあたれ。なんとかして埋めないと、来年きついぞ、神野」

「はい」

 あたしは目もあわせずに頷く。それしかない。あてがあるわけではないが、失った経保にかわるくらいの契約を貰って来れないと、来年の職選で営業ランクが落ちてしまう。

 ってことは、給料も落ちる。そうすると、キツイスパイラルに落ち込んで元に戻るのには根性と気力だけでは難しくなってくるのだ。

 今年はもう残り少ないけど、とにかく見込みを探す、ということで話が落ち着いて、あたしが腰を上げかけると、宮田副支部長が、あ、と声を出した。

「昨日、支部長は神野さんと会えたんですか?居酒屋にいました?」

 一瞬、二人で固まった。

 だけどすぐに復活した稲葉さんが、微笑みながら言った。

「ああ、うん。あの店に神野はいたよ。――――――元彼と」

 え?と宮田副支部長があたしを振り返る。あたしは多少うんざりしながら、顔の前で手を振った。

「・・・いえ、ほとんど同じタイミングで、ヤツが店に来たんです。で、酔っ払ってたあたしに注意してる時に支部長まで現れた次第で――――――」

「そして、二人で消えたんだよな」


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